介護福祉士養成大学における人材育成のあり方について(要望)

 資料ダウンロードはこちらへ

1.4年制大学で介護福祉士養成教育を受け介護福祉士となった人が、専門性の高い人材として社会で評価され、活躍できるようなしくみ・位置づけについて検討していただきたい。

介護福祉士になるには多様なルートがある。その中に、4年制大学で介護福祉学を自分の専門として学ぼうとする若い人がいる。意欲を持って入学し、4年間の大学における介護福祉教育で学んだ伸びしろのある介護福祉士のリーダー候補生である。介護現場では、介護のあるべき姿を自らの中に描き、現場で判断し、導くリーダーが求められている。4年制大学で介護福祉士養成教育を受けた介護福祉士が、専門性の高い人材として社会で評価され、活躍できるようなしくみ・位置づけを検討していただきたい。

具体的には、専門介護福祉士制度を検討する際は、4年制大学における介護福祉士養成教育を視野において検討していただきたい。

介護現場における喫緊の課題として慢性的な人手不足が挙げられています。この課題を解消するためには、介護職の社会的評価を高め、魅力ある「職」として確立することが求められていることは言うまでもありません。具体的には、介護の職場環境の改善として、賃金の改善に加えて、人事管理、リスクマネジメント、介護サービスの質の均質化などの組織的マネジメント機能が求められています。また、キャリア形成のために、介護現場における組織的な教育体制やスーパービジョン体制の確立が必要になります。これらの課題を達成するためにこそ専門介護福祉士の創設が不可欠です。

これらの機能を有する専門介護福祉士としての専門教育は、大学における4年間の就学期間が必要であり、さらに多様な専門分野が存在している大学においてこそ、専門介護福祉士の教育が可能になるものと考えます。

以上、喫緊の課題を解決し、介護のサービスの質を高め、社会的に多様化し、高度化するニーズにこたえるために、専門介護福祉士教育の場として4年制大学における介護福祉士教育を位置付けていただきたい。

2.介護教員研修会・介護教員要件を見直し、4年制大学で介護福祉士養成教育を受け介護福祉士となった人が、介護福祉の教育研究を担う次世代の人材育成につながるようにしていただきたい。

介護教員には、厚生労働省から、介護福祉士資格と5年の経験が求められます。また、文部科学省下にある、短期大学や大学で介護教員として採用されるためには、研究業績が求められます。さらに、採用前に、介護教員講習会を終了していなければならないことになりました。介護教員講習会は、博士の学位を取得している人であっても免除されないという現状があります。( 平成15年以降の博士取得については免除されません)。

資格取得、現場経験5年、大学院修了、研究業績、に加えて介護教員講習会となると、介護教員は遠い道のりです。4年制大学の介護福祉士養成教育を受け介護福祉士となった人が介護福祉教育に従事できるしくみ、介護福祉大学院で学び研究に導かれるしくみが必要です。

4年制大学の介護福祉士養成教育を受け介護福祉士となった人が、介護福祉士養成施設の教員になり、大学教員として戻ってこられるように、循環する道をつくっていくことが、日本の介護福祉を導くはずです。介護教員研修会や介護教員要件の見直しをお願いいたします。

(ちなみに、大卒看護師は、大学で教育を受け教育に関する科目を履修していれば、看護教員講習会を受講しなくてもよい、実務経験3年でよい、となっています。看護師だけでなく、保健師も助産師も、教員要件は、そのように改訂されました。介護福祉士も同様にしていただきたい。)

3.介護福祉専門職の労働条件を整え、魅力ある職域となるように推進していただきたい。

高校生が進路を考える際、介護の道にすすもうとしても、親や高校教員がひきとめる傾向があるという話を聞きます。介護福祉を志す若い人が増えるように、4年制大学で介護福祉士養成教育を受け介護福祉士となった人が、卒業後、生きがいをもって介護福祉士として働き続けられるように、社会的に魅力ある職域として認知されるような政策を推進していただきたい。

 資料ダウンロードはこちらへ
「介護福祉士養成大学における人材育成のあり方についての要望に関する調査」報告/宮 内 寿 彦(十文字学園女子大学)