2011年7月9日(土)に東洋大学白山キャンパスで介護福祉士養成大学連絡協議会総会・公開シンポジウムが開催されました。
総会の参加者は、北海道から鹿児島までの全国各地から、介護福祉士養成課程がある25大学から47人(うち個人会員4人)でした。ご多忙のなかご出席いただいた先生方には、足をお運びいただきましたことに御礼申し上げます。
・議事について
議事(第1号議案から第7号議案)については、すべて原案どおり決定をされました。主な事柄については次のとおりです。
まず、規約の改正が行われました(第3号議案)。改正のポイントは、本会事務局が理事会承認を経て会長による指定により定められることになった点、理事定数を20名以内に、会長推薦理事を新設して5名以内に、監事を2名とした点、そしてそれら役員の理事及び監事選出規則を定めることにした点です。
その決定に基づき、理事及び幹事選出規則が定められました(第4号議案)。これにより、理事・監事の選出のための選挙が行われること、そのための選挙管理委員会が設置されること、理事・監事の選出方法や選挙権・被選挙権の詳細が定められました。
これを受けて、選挙管理委員(委員長は日本社会事業大学の佐々木由惠先生・委員は他2名)が選任されました(第7号議案)。これにより、理事・監事の改選時期となる2012年7月に向け、2012年4月に選挙が行われることとなりました。
・報告事項について
報告事項については、4点が事務局や各担当理事から説明・報告されました。主な点は次のとおりです。
まず、介護福祉士の養成を行っている4年制大学が全国で68大学(2011年6月現在)であるものの、そのうち2009年度に学生募集を停止したものが3大学、2010年度に募集停止が2大学、2011年での募集停止が1大学あることの報告がありました。なお、本会への加入状況(2011年6月現在)は、正会員大学が36大学、個人会員のみ加入している大学が16大学で、未加入の大学は16大学であることが報告されました。
また、本会会員を対象とした「介護福祉士養成大学における東日本大震災影響状況把握アンケート調査」の報告が担当の宮内寿彦理事から行われました。その概要は以下のとおりです。
・大学設備等の被災は12大学、学生(本人・家族・自宅等)に被災があった大学は14大学。介護福祉士養成コースにはいないものの、学内で学生が死亡した大学も数大学あり。教職員に被災のあった大学は9校。
・震災による影響として、学事暦の進行や大学運営自体への影響、次年度の学生募集への影響、節電による授業運営の問題を挙げる大学が多くあった。
・教育に関する影響としても、カリキュラムや実習への影響が大きく、教職員の心身の健康への影響を挙げる大学が比較的多くあった。
・学生についても、学費や経済的な影響があり、震災による学費支援制度を設けた大学も複数ある。
・災害時の学生との連絡手段、安否確認、教員間の連絡に不安要素のある大学も多く、今後の課題がうかがえる。
総会に引き続き、本会の古川孝順会長(東洋大学)が記念講演を行いました。そのなかで古川会長は「東日本大震災での被災状況が今日までの社会福祉のさまざまな問題を顕在化させた」と指摘しました。たとえば、東北の海岸沿いの限界集落を津波が襲った際、津波警報などの情報が伝わらない・伝わっても逃げられないといった事態が起こり、その結果、地方のコミュニティの崩壊が進んでいたことが多数の被災者の発生という形で目に見えて現れたことなどを示しながら、「生活を社会の文脈のなかでとらえる」ことの重要性や「(地域格差や自助や互助の限界を踏まえ)社会保障の組み換えが必要」といった所感を述べました。
シンポジウム「四年制大学における介護福祉士養成の意義とあり方を考える-新カリキュラムでの教授内容に焦点をあてて-」では、田中安平氏(鹿児島国際大学・教授)、杉原優子氏(社会福祉法人健光園十四軒町の家・施設長)、横山貴美子氏(東洋大学・准教授)がシンポジストを、井上千津子氏(京都女子大学・教授)がコーディネーターを務め、テーマにそった意見交換と議論が行われました。
田中氏は4年制大学のベテラン教員としての立場から4年制大学と2年課程での介護福祉士養成のための科目群を比較し、介護福祉士の専門性を習得するために直接援助技術の学びが重要であることを示しました。そのうえで、4年制大学ではソーシャルワーク・地域福祉などの学びに優位性があり、それを特徴化させることの有用性を示唆しました。
杉原氏は介護の実践現場の立場から、4年制大学卒の介護福祉士あるいは4年制大学の実習学生に対する所感を述べ、問題を発見しそれに対処する力量や地域との関係を深める視点を有している点について触れ、期待感を示しました。
また、横山氏は、大学でのいわゆる新カリキュラムでの介護過程や実習指導にICFの視点を導入している経験から、生活の全体像を把握することやさまざまな生活要素の関連性を見つめることを学生に習得させている実践を紹介しました。それに引き続き、東洋大学の学生が実習での介護過程の対象とした事例を発表し、その教育の成果の一端を示しました。
最後に、コーディネーターの井上氏が各シンポジストの発言から「新カリキュラムのなかでいかに大学ならではの介護福祉士教育の特徴を示すかが課題」「より専門性の高い介護福祉士を養成することが使命」とまとめ、有意義な議論の時間となりました。 |