2023-02-16
大学生の介護実習紹介
大学生の介護実習紹介
東洋大学 介護福祉士コース教員 渡辺裕美
東洋大学 介護福祉士コースでは、4つの介護福祉実習をカリキュラム化しています。
1年秋学期から介護実習がスタートします。小規模多機能型居宅介護、その後、認知症対応型グループホーム、 またはデイサービス。2年生の秋学期は特別養護老人ホーム、3年次春学期は、障害者支援施設で実習します。4年春学期は訪問介護実習を行います。 学生たちのほとんどが社会福祉士も取得するダブル国家資格取得希望者ですので、3年次の夏休みから秋学期には、社会福祉実習もあります。
2年生の介護実習報告を紹介します。2年次は、受け持ち事例を決めて、個別介護計画の立案展開実習を行ないます。学生は、受け持ち利用者の思いに耳を傾け、利用者本人の力を引き出す介護を試みます。前半12日間で現場実習、途中、学生は大学に5日間もどってきます。学内で学生が受け持つ全事例のケア・カンファレンスを行います。個別介護計画をまとめて書くことを、教員がサポ―トしています。後半6日間、学生は現場実習にもどり、実習指導者に相談しながら、利用者の体調にあわせて、計画を展開していきます。
学んだ知識と技術を応用したきらめく瞬間は、宝物です。
学生たちが展開した、リアルな介護計画の立案と展開をここに4つ紹介します。
事例 A
歌詞表づくりに、本人の得意な歌、覚えている曲、認知症で言葉が失われつつあっても、音楽の力は大きくひびきます。大きな歌詞表 というアプローチに、視覚的な大きさだけではなく、クイズ(空欄)で脳トレ 表紙づくりというアクティビティ いっしょに歌うという楽しい時間 いろいろな要素が複合的に重なっています。Aさんがいつも座面の下に手を入れているのを不思議に思い、なぜだろうと、椅子に座ってみた、そしたら座面がへこんでいることに気づいたということにも驚きました。圧分散できる素材のクッションがあれば、Aさんの座位はもっと保持しやすいはずです。手浴を行う前後に、手の温度がどう変化するのか、非接触体温計で測定しました。科学的なデータがそこに示されています。とっても素晴らしい観察と深い思考に裏付けられた実習が行われています。
事例 B
自分で歩き続けたい。100歳まで長生きしたい という気持ちにこたえて、よく考えました。
利用者に、「歩いているときの写真を撮影」して見せたことは、とくに素晴らしいです。客観的な証拠 自分で歩いている時の姿勢を写真で見ることで、歩いているときはこんなに背中が伸びている ということを 実際にわかってもらえました。
何より大事なのは、利用者の 気持ちを膨らませること。やる気を引き出すこと。それに成功しました。ストレッチも有効。いっしょにそばで歩いてくれる人がいたから、単に運動機能の時間ではなく、あたたかな交流の時間にもなりました。すばらしい実習です。
事例 C
失語のトレーニングに用いた単語練習に、Aさんが以前の飼っていたペットの名前「〇〇〇〇」を選んだ発想力に驚きました。言葉を発声するたびに、その人の幸せな思い出が頭に想起される、幸せな時間がよみがえる・描かせるアプローチ、にとても感心しました。
滑り止めを使うことで、いつもの食べ方ができなくなるということにも気づきました。桜 モチーフや、言語トレーニング表は、実習後もひきつづき実践されることでしょう。実習期間にとどまらない、その先へ向けての個別介護を展開しました。豊かな発想で支援が展開されています。
事例 D
話しにくさ を解消する。ただ紙を渡すのでなく、水分・口腔体操・いっしょに読みあげる。という複合アプローチが行われています。深く全体から介護計画を組み立てたことがうまく展開したポイントです。よく考えて展開した実習です。いっしょに ということが 何よりもパワーになります。日めくりカレンダーは、今年だけではなく、ずっと、いつまでも使えるカレンダーの製作。しかも、イラストやシール、本人が好む赤色での表紙 というアイデアにも感服しました。すばらしい実習です。見事に個別のパーソンセンター介護を展開しています。
このような実習を行うには、実習施設の指導者と学内の教員が車の両輪が必要です。実習現場と学内教育によって実習が行われました。介護福祉士は何をする人か、この問いに対して、学生実践がその答えを示しています。学生を大きく育てていただいた利用者の方々、細かい配慮やご指導をいただきました施設長をはじめ実習指導者や職員の皆様に対して、心から御礼を申し上げます。
介護福祉実習担当教員
東洋大学 教 授 渡辺 裕美
東洋大学 教 授 古川 和稔
東洋大学 准教授 高野 龍昭
東洋大学 准教授 八木 裕子
東洋大学 助 教 任 セア
東洋大学 助 教 西村 圭司